ダイヤのA(2)のレビュー!マウンドを奪われた物語

野球

田舎球児・沢村栄純が名門・青道高校の圧倒的な実力と空気に呑み込まれながらも、「エースになる」という大風呂敷を本気で広げ始める。副題の一つが**「投手失格」**──この言葉だけで胃がキュッと締まるが、ページをめくればその痛みが爽快感にひっくり返る瞬間が何度も訪れる。


ざっくりストーリー(ネタバレは薄味で)

新入生テストで剛腕・降谷暁が150km/h近い速球を披露し、グラウンドがざわつく横で、沢村は相変わらず軟投と制球難の合わせ技。コーチ陣に早々と「外野守備」を命じられ、自尊心はズタボロ。「俺は投手になるために来たんだろ⁉︎」と吠えるも、現実は非情。さらに二軍三軍を分ける**“振り分け戦”**が告げられ、早くも崖っぷちへ。ここから沢村が“マウンドを諦めない理由”を全身で証明していく。──結果は語らないが、最後の見開きは心臓を鷲掴みにする破壊力なので刮目してほしい。


キャラクターと熱量

◆沢村栄純──「まだだ!」「代打オレ!」の化身

  • 感情ダダ漏れ:降谷に嫉妬、三年生にビビり、御幸にツッコまれ、読者はただ“うるさい主人公”を微笑ましく見守るはずが……気付けば一緒に拳を握っている。

  • クセ球のロマン:ノビもキレも微妙なのに、芯を外してポップフライを量産する“魔球未満の魔球”。コーチの「捕れそうで捕れないボール」という評が秀逸で、球質マニアならニヤける場面。

◆降谷暁──静かなる怪物

  • 150km/h近い直球でベンチを凍らせる一年生左腕。口数は少ないが行動で語るタイプで、沢村のライバルポジションにして壁。彼の一球で物語が“全国レベル”にスケールアップ。

◆御幸一也──皮肉屋の司令塔

  • 「投手8割は素材、残りはキャッチャー次第」と言い切る自信家。沢村を泳がせつつ、本気の配球で一瞬にして空気を変える。笑顔の裏で何を見ているのか、底の見えなさが最高のスパイス。

◆三年生トリオ──意地と引き際を知る先輩

  • 倉持・小湊・伊佐敷などの上級生が「一年に席を渡してたまるか」と牙を剥く。特に伊佐敷のフルスイングは“高校野球最後の夏”へ向けた執念の象徴で、胸が熱い。


心を揺さぶったシーン BEST5(結末は伏せます)

順位 シーン 震えポイント
1 御幸が沢村の球を「もっと胸を張れよ、クセ球だろ?」と受ける 場の空気が一変、鳥肌
2 振り分け戦前夜、沢村が鏡に向かって拳を振り下ろす 負けん気100%の自家発電
3 降谷の剛球に三年生がバットをへし折られる “才能の暴力”に絶望と興奮
4 「代打オレ!」でバットを持つ沢村 捕手なの⁉︎ ピッチャーなの⁉︎ という笑撃
5 ベンチ裏でコーチ片岡が帽子を深く被り直す 監督の覚悟が背中で語られる瞬間

作画・演出の魅力

寺嶋裕二のペンは2巻でさらに加速。投球フォームは4コマ連続の“タメ”+1コマ大開放で“肘から先が千切れそうなスピード”を想像させ、打球の弾道は極太スピード線で“空間を切り裂く音”を可視化。汗と埃の粒子描写が細かく、ページをめくるたびグラウンドの匂いが立ち上る。

ギャグ顔→シリアス顔の落差も秀逸。沢村の白目ギャグが2ページ後には鬼気迫る形相へ反転し、「この漫画テンポ良すぎだろ」と思わず声が出る。


レビューサイトでの反応(ざっくり)

読者レビューをのぞくと「ライバルが出揃って一気にワクワクが増した」「ギャグと真剣勝負のスイッチが狂おしいほど好き」という声が突出。1巻で掴んだ初心者を2巻で一気に“野球沼”へ沈めにくるのは、まさに作者の“ピッチングプラン”通りだろう。


少しだけ惜しいポイント

  • 野球用語の増量:送りバント、スプリット、カットボール……初心者には難解だが、御幸の解説と欄外プチコラムがほぼフォローしてくれる。

  • 降谷の影が濃すぎ:主人公の見せ場に被るレベルで目立つので、「え、こっちがエースで良くない?」と思う瞬間も。しかしその違和感こそ、後の“沢村の逆襲”を引き立てる布石。


まとめ──「投手失格」から始まる最強の反撃

2巻は沢村にとって“マウンドを奪われた物語”であり、読者には“夢を追う醍醐味”を叩きつける起爆巻だ。ライバルの才能に圧倒され、監督から外野行きを宣告されても、沢村は目を逸らさない。それどころか「次の試合、投げさせてくれなきゃイヤだ」と駄々をこねる子どもっぽさが、逆に未来のエースの原石感を爆上げにする。

最後のページを閉じたとき、胸に残るのは「まだだ、終わっちゃいない」という熱い逆襲の合図。続きは是非、ページの砂埃と一緒に味わってほしい。

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