2巻で「投手失格」を突きつけられた沢村栄純は、この3巻(2006年12月15日発売/全192P)で再びマウンドへ食らいつき、チームと読者の心を揺らす“第二のプレイボール”を鳴らす。副題はズバリ**「二軍昇格」**。でも、そこに至るまでの道のりがエグいほど泥くさくて、ページをめくる指先がいつも土埃でザラついている気さえした。
ざっくりあらすじ(ネタバレ最小限)
-
上級生 vs. 1年生の紅白戦続行
小湊のヒットで無理やりホームに突っ込んだ沢村が先制点をもぎ取るシーンでスタンドは大騒ぎ。栄純の“泥だらけヘッドスライディング”が両軍の闘志を点火させた。 -
二軍昇格と“死んだ目の捕手”
熱さを買われた栄純は小湊・降谷と共に二軍へ引き上げ。しかし御幸と組めると思いきや、配されたバッテリー相手は肩を壊してリハビリ中の三年・滝川・クリス・優。ミットすら構えてくれない“死んだ目の先輩”に、沢村のフラストレーションは頂点へ。 -
土下座から始まる師弟物語
クリスの過去と覚悟を知った沢村は、ベンチ裏で土下座して「野球を教えてください」と懇願。バカ正直すぎる一礼が、止まっていた先輩の時間を少しずつ動かし始める──。
キャラクター別・“刺さり”ポイント
キャラ | 今巻のハイライト | 感情ゲージ |
---|---|---|
沢村栄純 | 紅白戦でガッツ全振りのダイブ→二軍昇格で天国→クリスに相手にされず地獄。ジェットコースターで胃がムカつくほどの揺さぶり。 | 🎢💥 |
滝川・クリス・優 | 壊れた肩を抱え“余生”を過ごす三年。冷めた視線の裏に潜む折れた情熱が、沢村の直球で少しずつ溶ける過程が胸を抉る。 | 🧊→🔥 |
降谷暁 | 150km/h近い豪速球で二軍試合を支配。喋らないのに存在感ゴリゴリで、沢村の嫉妬メーターを爆上げ。 | 🚀 |
御幸一也 | 「投げてもらえない? そりゃクリス先輩の自由だろ」と沢村を突き放す言葉の裏に、深い敬意と焦りを隠す。“腹黒司令塔”の二面性が光る。 | 😏 |
五感を揺さぶるシーン BEST3
-
土下座の“ドン”という効果音
砂利床で膝を打ちつけた擬音が痛い。沢村のプライドが砕け散る音にも聞こえて、こっちの胸もヒリつく。 -
降谷の真っ直ぐがバットを粉砕
コマ外にはみ出すスピード線と「バギィィン!!」の擬音。才能の暴力を視覚化した衝撃描写に鳥肌。 -
クリスの無言キャッチボール
初めてミットを構えた瞬間、“カシャ”とカメラシャッターのような効果音が静かに鳴る。音を抑えた演出が逆に震える。
作画&演出の進化
寺嶋裕二は“速度の見せ方”で真骨頂を発揮。投球→捕球までのわずか0.4秒を5コマ割りで一瞬に圧縮し、ページをめくると同時にバットが空を切る。さらにシリアスとギャグの落差を拡大し、沢村の白目ギャグ顔→血管ブチ切れ顔の差が2コマ以内で切り替わるから読者の表情筋が追いつかない。
背景のトーン選択も巧妙。紅白戦は薄いトーンで高揚感を、クリスとのシーンは網掛け濃度を上げ“停滞した空気”を視覚化。読者は無意識に呼吸を浅くさせられる。
個人的に刺さった“セリフ未満”のコマ
-
御幸がベンチで見せた一瞬のしかめ面
セリフなし、コマも豆粒サイズ。でも「クリス先輩を放っておけない」本音が滲んでいて震えた。 -
クリスのリハビリノート
机の隅で埃をかぶっていたメモ帳。ページの端が擦り切れている描写に、彼がどれだけ“戻りたかったか”を悟って泣きそうに。 -
沢村の靴ひも
紅白戦直前、汚れたスパイクひもをギュッと締め直すアップ。モノローグ一切なしで“覚悟完了”が伝わる熱いワンカット。
ちょっとだけ惜しいポイント
-
クリスの背景説明が駆け足
一気に感情移入させるための演出だが、怪我シーンのフラッシュバックをもう1ページ深掘りしてほしかった。とはいえ続巻で補完されると信じている。
まとめ──「投手失格」からのリベンジロード開通
3巻は沢村が“投げさせてもらえない理由”と正面衝突し、クリスという挫折の化身と手を結ぶことで「伸びしろモンスター」へ進化する物語だ。打たれても笑い、無視されても叫ぶ沢村の図太さが、読者の胸の奥でくすぶる“もう終わりだと思った夢”に酸素を送り込む。
ページを閉じた後、ふと空き地のキャッチボール相手を探したくなる。本当の熱と汗は、ぜひ紙面で直に浴びてほしい。