はじめに──“全国300人のFWを閉じ込め、最凶のストライカーだけを生き残らせる”。そんな狂気のプロジェクトで幕を開ける『ブルーロック』1巻は、サッカー漫画の「友情・努力・団結」を逆手に取り、“エゴこそ正義”とぶち上げた衝撃作だ。2018年11月16日に講談社から発売され、原作・金城宗幸、作画・ノ村優介の黄金タッグが放つフットボールバトルロイヤルの序章となっている。以下ではネタバレを避けつつ、読み終えて胸が熱くなったポイントと、紙面から漂う“異様な熱”をラフに語っていく。
ざっくりストーリー
県大会決勝でパスを選び敗北した高校2年FW・潔世一は、日本フットボール連合が立ち上げた“青い監獄(ブルーロック)”へ召集される。そこでは鬼才コーチ・絵心甚八が「世界一のエゴイストだけが日本をW杯優勝へ導く」と宣言し、脱落=サッカー人生終了というデスゲームを告げる。300人のFWが11人部屋に振り分けられ、一次選考の総当たりリーグがキックオフ──というのが1巻の大枠だ。
キャラクターが放つ“エゴの火花”
潔世一
敗戦のトラウマで自信ゼロなのに、絵心の言葉に胸を撃ち抜かれ“自分だけのゴール”を渇望し始める姿がリアルに痛い。読者も一緒に「俺には何がある?」と拳を握るはず。
蜂楽廻&馬狼照英
同じチームZに配属された天才ドリブラー蜂楽は“ボールと遊ぶ”快感に忠実な自由人、一方で馬狼は“王様”を名乗る破壊的エゴイスト。刃物のように尖った個性が初対面から衝突し、場の空気を震わせる。
絵心甚八
「勝つべくして勝ち奪れ」「“たまたま”の成功は進化に繋がらない」──強烈な名言を連発しながら若者の価値観を粉砕する狂気の指揮官。ページをめくるたび読者まで脳を揺さぶられる。
五感を締め付ける演出
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視覚:ノ村優介の線は細く鋭く、スパイクが芝を裂く瞬間を極太集中線で爆発させる。
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聴覚:ゴールネットを揺らす「グワァン!」、顔面ブロックの「ベキッ!」など効果音が痛覚を呼び覚ます。
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空気:監獄施設の無機質な壁は濃いグレートーンで塗り潰され、読者の呼吸まで薄暗くなる。
読後に残る“エゴ”という問い
多くの評論が指摘する通り、この作品の核心は「エゴは本当に悪か?」という哲学的テーマにある。絵心は“利他的なチームプレー”を真っ向から否定し、「自分がゴールを奪うという執念だけが味方を救う」と断言。この過激さが、従来のサッカー漫画の価値観を一蹴して痛快だ。
個人的“刺さりシーン”BEST3(詳細は伏せます)
順位 | シーン | 胸の叫び |
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1 | 潔が初めて“嗅覚”でゴールを狙うカット | 「今、主人公になった!」 |
2 | 11人で鬼ごっこに興じる序盤試験 | 絶望と笑いが同居する狂気 |
3 | 絵心の“敗者切り捨て”スピーチ | 震えながらページをめくった |
ちょい惜しいポイント
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“キャラ名と所属チーム”が一気に出るため初見は混乱必至。ただし巻末のキャラ表で概ね解決。
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サッカーの戦術解説は最小限。リアル派ファンには物足りないかもしれないが、代わりに心理戦と演出で殴りつけてくるので問題なし。
まとめ──“俺が世界を変える”という快感
1巻時点で試合らしい試合はほぼ無く、ほとんどがプロローグ。それでもページを閉じたあと、脳内ピッチではもうホイッスルが鳴っている。誰かのためにパスを出すか、自分の名前でゴールを刻むか。その選択を突きつけられる読者こそ、ブルーロックの“被験者”なのだと実感した。
ぜひ自分の目で“青い監獄”の扉を開けてほしい。