ブルーロック3巻は「仲間の裏切り」「千切の覚醒」という2本の導線で一気に血圧をブチ上げてくる加速巻だ。チームZは2戦目を引き分けに持ち込み勝点1を得たものの、次の相手はフィジカル怪物の鰐間兄弟を擁するチームW。しかも味方の久遠がまさかの買収行為で“12人対10人”の地獄を招く――ここにきて作品のキャッチコピー「エゴで世界を変えろ」が最も醜いかたちで可視化され、読者の胃を容赦なく締め上げる。
あらすじ(深掘りしすぎない程度)
試合開始直後からWは鰐間兄弟の連携ダンクを連発し、守備の穴を埋めるはずの久遠が“わざと遅れる”動きでZを殺しにかかる。潔は「11人欠けても勝つ方法」を脳内で電光石火に演算し、封印していた千切のスピードという切り札に賭ける。過去の大怪我とトラウマで縮こまっていた千切が、自分の脚を“武器”として再認識しタッチラインをぶち抜くカットは、ページを裂くほどの爽快感だ。試合は4―4のドローで終了、勝点2を積み上げたものの「裏切り者を抱えたまま次節へ」という最悪の後味を残す。
キャラクターの火花
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潔世一 – 空間認識能力で“最適解”を最短で導く脳筋システムがさらに研ぎ澄まされ、千切へのスルーパスで快感に目覚める。
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千切豹馬 – 「もう一度走りたい」という欲望をエゴに昇華し、ピッチ半分を7秒台で駆け抜ける爆発的人気シーンを獲得。
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久遠渉 – “チームを売ってでも生き残る”という現実主義が吐き気を催すほどリアルで、ブルーロックの倫理観をぶん殴る存在。
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鰐間兄弟 – 兄・計助と弟・淳壱が空中戦を支配。肉弾戦サッカーの象徴として立ちはだかり、読者に「フィジカルは正義」を刷り込む。
震えたシーン3選
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久遠の裏切り宣言
自陣ゴール前での「スマン…俺、勝ち残りてぇんだ」の独白は、友情フラグを一撃で折る悪魔のささやき。 -
千切のトップギア
重い脚枷が外れた瞬間、背景が一面ホワイトアウトし、速度線が読者の視界を奪う演出が芸術的。 -
潔の“0.01秒の閃き”
鰐間の頭上パスを予見しインターセプト→カウンター起動。ワンコマの目線アップで“認識領域”が伝わる快感がクセになる。
演出と作画
ノ村優介の筆致は3巻で“加速と衝撃”を両立。スプリント描写は縦長コマ+遠近強調でピッチの奥行きを極限まで誇張し、千切のブレイク時にはフレーム外へ速度線を溢れさせて「ページを飛び越える速さ」を体感させる。 一方、久遠の裏切りシーンでは背景をベタ黒に落として“息苦しい静寂”を演出し、心理の闇を視覚化。スポーツ漫画の王道にホラー的コントラストを盛り込むセンスが光る。
読者の反応
読書メーターでは「千切覚醒で涙腺崩壊」「久遠許すまじ」と感情ジェットコースターのレビューが続出。 SNSでも「高速ドリブル系ヒロイン爆誕」「裏切り展開がデスゲーム並み」と盛り上がり、3巻以降のアニメ6〜7話相当で視聴者数が急増したとの報道も。
少し惜しい点
キャラと展開が怒涛すぎて、千切の怪我設定や鰐間兄弟のバックボーンがやや駆け足。もう1話分あれば“恐怖→憧憬”の感情移行がさらに深掘りできただろう。ただし疾走感と天秤にかければ納得の取捨選択と言える。
まとめ
ブルーロック3巻は、「チームは裏切る、身体は壊れる、でも走る」――そんな泥まみれのエゴを肯定し、読み手の闘争本能に火をつける起爆剤だ。ページを閉じても鼓動が鳴り止まず、無意識にライン際を全力疾走したくなる。
全身で“青い監獄”の熱風を浴びてほしい。